日本国内の神社仏閣の境内や雄大な自然の中に佇み、圧倒的な存在感を放つ「大銀杏(おおいちょう)」。その黄金色に輝く黄葉の美しさはもちろんのこと、樹齢数百年から千年以上を超える巨樹としての歴史的・文化的価値、さらには日本の伝統文化である大相撲の世界において関取だけに許された特別な髪型の名称としても広く知られています。
本記事では、「大銀杏とは」という基本的な意味や語源・由来をはじめ、全国に点在する国指定天然記念物などの名所、そして大相撲の結髪における条件や歴史的背景まで、知っておくべき情報を深く網羅してわかりやすく解説します。
「大銀杏とは」の意味と植物学的特徴・歴史的背景

「大銀杏」という言葉の本来の植物学的定義は、数百年から千年以上もの星霜を経て、幹回りが非常に太く成長したイチョウ(銀杏)の古木・巨樹を指します。イチョウは「生きた化石」とも称される古代からの植物であり、中生代から地球上に生存してきた極めて生命力の強い裸子植物です。
日本国内におけるイチョウは、仏教伝来とともに大陸から渡ってきたものや、古来より神木・仏木として神社仏閣の境内に植樹されてきたものが多く、地域社会の歴史や信仰と深く結びついてきました。樹皮が厚く、水分を多く含んでいることから耐火性に優れているため、大火から寺社仏閣を守る「火防(ひふせ)の木」としても大切に保護されてきた歴史があります。
大銀杏の由来と神聖視されてきた伝説の数々
日本各地の大銀杏には、それぞれ土地の伝承や神話、歴史上の人物にまつわる数々の伝説が残されています。古来より人々は、その圧倒的な生命力と黄金色に染まる季節の美しさに畏敬の念を抱き、神の依り代や御神木として崇めてきました。
例えば、源頼朝や源実朝といった鎌倉時代の歴史人物にまつわる伝承を持つ大銀杏(鎌倉鶴岡八幡宮の旧樹などが有名です)や、弘法大師(空海)をはじめとする高僧が手植えしたと伝えられる古木が全国に点在しています。こうした由来を知ることで、単なる植物鑑賞にとどまらない、日本の歴史や信仰の深さを肌で感じることができます。
全国の圧倒的な巨樹・大銀杏スポットと見頃の時期
日本全国には、国の天然記念物に指定されている名木をはじめ、訪れる者を圧倒する圧巻のスケールを誇る大銀杏スポットが数多く存在します。それぞれの地域によって気候風土が異なるため、黄葉(紅葉)の見頃の時期にも違いがあります。
| 名称・スポット名 | 所在地 | 主な特徴・指定状況 | 例年の見頃の時期 |
|---|---|---|---|
| 北金沢のイチョウ(北金沢の大イチョウ) | 青森県深浦町 | 日本一の巨樹とも称される、国指定天然記念物の巨大イチョウ。樹齢1,000年以上。 | 11月中旬 ~ 11月下旬 |
| 鶴岡八幡宮の銀杏(由来の地) | 神奈川県鎌倉市 | 歴史的背景で広く知られた神奈川県の象徴的な存在。 | 11月下旬 ~ 12月上旬 |
| 長床の大イチョウ(新宮熊野神社) | 福島県喜多方市 | 拝殿前の広大な敷地に黄金色のじゅうたんが広がる圧巻の景観。 | 11月中旬 ~ 11月下旬 |
| 垂水の大イチョウ | 鹿児島県垂水市 | 個人所有の農園にある巨大なイチョウで、夜間ライトアップも実施される名所。 | 11月下旬 ~ 12月上旬 |
これらの巨樹は、毎年秋が深まるにつれて鮮やかな黄色へと色づき、落葉の時期には地面一面が黄金色の絨毯に覆われるなど、季節の移ろいを最もダイナミックに感じられる観光・探訪スポットとして多くの人々を魅了しています。
大相撲における「大銀杏」の髪型とは?歴史と結髪の仕組み
植物としての巨樹を表す言葉としてだけでなく、「大銀杏」は日本相撲協会が定める大相撲の世界において、力士の髪型(結髪)の名称としても極めて重要な意味を持っています。
大相撲の土俵上で力士が結う髪型には、力士の階級や経験に応じていくつかの種類があります。入門したての序ノ口や序二段、三段目、幕下の力士たちは「丁髷(ちょうまげ)」を結いますが、十両に昇進して晴れて「関取」の地位を得ると、より格式高く美しい「大銀杏」を結うことが許されます。
この大銀杏という髪型は、文字通りイチョウの葉が広がった形に似せて髪を頭頂部で結い上げ、髷の先端を扇状に大きく広げるのが特徴です。激しいぶつかり合いや投げの打ち合いといった取組中において、髪が顔にかかったり相手を引っ掛けたりすることを防ぐ実用的な機能を持つと同時に、関取としての誇りと威厳を象徴する伝統文化の結晶となっています。
関取が「大銀杏」を結うための条件と知られざる裏側
大銀杏を結うためには、単に十両以上に昇進するという階級の条件を満たすだけでなく、髪の長さやボリュームも欠かせないとなります。そのため、新十両に昇進したばかりの力士の中には、髪の毛の長さが十分に足りず、床山(ゆかやま:力士の髪を結う専門の職人)の高度な技術や工夫によって何とか大銀杏を結い上げているケースも見られます。
また、取組中に激しい動きによって大銀杏が崩れてしまうことを防ぐため、たっぷりのびんつけ油を使って念入りに固められています。この独特の甘い香りのするびんつけ油の香りも、大相撲の独特な雰囲気を形作る大切な要素の一つです。加えて、万が一取組中に大銀杏が完全に崩れてしまった場合には、取組後に「まげが崩れた一番」として相撲界のニュースや話題になることもあります。
【大銀杏とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:植物の「大銀杏」と、相撲の「大銀杏」の名前の由来や関係はありますか?
A1:どちらも扇を広げたようなイチョウの葉の形状(末広がりなシルエット)に由来しています。植物の巨樹の堂々とした姿と、大相撲の関取が結ぶ格式高い髪型の形状が、それぞれ「大銀杏」と称されるようになりました。
Q2:日本一大きな大銀杏はどこにありますか?
A2:一般的に青森県深浦町にある「北金沢のイチョウ」が日本一の巨樹として知られており、国の天然記念物にも指定されています。樹齢や幹回りのスケールにおいて国内トップクラスを誇ります。
Q3:幕下の力士でも大銀杏を結ぶことはできますか?
A3:原則として大銀杏を結うことができるのは「十両以上」の関取に限定されています。ただし、弓取式を担当する幕下以下の力士が特別に大銀杏を結う例外的なケースも存在します。
「大銀杏」という言葉は、大自然の中で数百年もの歳月を生き抜いてきた圧倒的な巨樹の姿を示すと同時に、日本の伝統芸能・大相撲の世界において誇り高き関取たちの象徴として、深く私たちの生活や文化に根ざしています。
全国各地の神社仏閣に佇む古木を訪れてその歴史の重みを感じ取るもよし、本場所の土俵で力士たちが結う美しい髪型に日本の伝統美を見出すもよし、「大銀杏」という存在を通じて、私たちが受け継いできた自然への畏敬の念と文化の奥深さを改めて実感することができるでしょう。